嫌い。

今まで大好きだった人が、大嫌いになった。
見たくないものを見てしまった。
最高に格好良いと思っていた人が、最高に格好悪いことをしていた。
最低だと思った。
ただ、それを見てしまっただけなのに私は裏切られた気持ちになった。
今まで信じていたのに、そんな人だとは思っていなかったのに。
よくあんなことが言えるなと思った。
よくあんなことが出来るなと思った。
そしてそのことに3年も気付かなかった私も最低だと思った。
彼女として失格だと思った。
そして何より、あんな人と付き合いをしていた私が恥ずかしくなった。嫌いになった。
あの人を好きになってから、私は人を心から信じられるようになった。
だけどそれが、一瞬にして崩れていった。
あの人が私に今までずっと嘘をついていたことがショックだった。
「そんなことするわけないじゃん」
それが嘘だったなんて。
信じていたのに。好きだったのに。
それが一瞬で信じられなくなって。大嫌いになって。怖くなって。
私はあんなことをしてる人たちを敵視しているわけじゃない。
ただ、怖いだけ。そしてその感情が「嫌い」になるだけ。
だた、昔のことを思い出すだけ。辛かったことを。
あの人に出会って私は変わった。ものすごく。それは感謝している。
だけど、怖い。すごく。ものすごく怖い。
あれを見てしまってから、話しかけられると恐怖感を感じてしまう。
足が竦む。手が震える。何を言ってるのかも分からなくなる。言葉が聞き取れなくなる。
今まで信じていたことも、なにもかも信じられなくなった。
すれ違うだけで、怖くて、立ち止まってしまう。
もう何もかもが嫌になる。視界の全てがモノクロに見えるような気分だ。
あの人のことを思うと何もかも頑張れた。嫌いだったこともできるようになった。
だけど、私は心から信じる事が出来なくなって。
口を動かして「大丈夫だよ。信じてるから。」 と、言うことしかできなくなった。
あの人は私が今こんな状況だとは気付いてないと思う。
だから怖い。いつもと同じように接してくるから。怖い。
考えると視界が曇る。涙があふれてくる。後悔と恐怖感と悲しみで。
心にぽっかりと穴があいたように、私は口を動かすことしかできなくて。
まるで、ロボットみたいな人間。
ありえない。そう思っていても、やっぱり考えてしまう。
必死になって、苦しんで、あの人のことを信じようとした。
だけど、私には出来なかった。
最低だ。あの人も私も。
私は彼女失格。あの人は彼氏失格。
失格同士の恋愛なんて。もう嫌だ。嫌いだ。大嫌いだ。
こんな状況私には耐えられない。
だけど、耐えなくてはならない。
同じクラスという最悪の状況。
卒業まで耐えなければいけないという苦痛。
ほんとうは今すぐにでも別れを告げたい気分。
だけど、そんなことできない。
あの人は4月には私立の男子校に入学する。
そして私は、私立の女子校か公立の中学に入学する。
だからそれまで、我慢するしかないんだ。
でもこんな状況でどう接していいのかわからない。
足が竦む。手が震える。
見るからにおびえている私。
きっといつか気付くはず。
だから私はそれを待つ。
あの人から気付いてもらえれば話ははやい。
だから、私は自分からはやらない。
でも、そんなのはただの言い訳で。
本当は怖いだけで。心のどこかに信じたいっていう気持ちがあって。
だけどそれを引き出せなくて。
多分私は前のようにあの人を愛することは永久に出来ないと思う。
私はあの人をもう愛せない。嫌い。怖い。



あの人と出会って私は大きく変われた。その代償にもう何もかも信じられなくなった。
失ったものは大きかった。